「アアアアアアア…フレッーシュ!」の秘密:ビーサイド/ファブ・5・フレディ「チェンジ・ザ・ビート」

Beside / Fab 5 Freddy – Change The Beat (1982)

Beside / Fab 5 Freddy – Change The Beat (1982)
via. Discogs

ビル・ラズウェルによると、「フレッシュ」の声の主は、その夜、ブルックリンのレッドフックのスタジオに偶然居合わせていたマネージャー、ロジャー・トリリングの声だと言います。「こんなこと言っても、誰も信じないだろうね」とラズウェルは言います。

The Origins of That “Aaaaahhhh… Fresssshhhhh!” Sample – Line Out – The Stranger

シアトル発のメディア「The Stranger」2010年11月2日号に掲載された特集記事から。

1982年米セルロイド レコードからリリースされたヒップホップの古典、ビーサイド/ファブ・5・フレディによる「チェンジ・ザ・ビート」。

ビーサイドを名乗る女性がフランス語でラップする「フィメイル・バージョン」で、エンディングに流れるボコーダー処理された声「This stuff is really fresh !」こそが、史上最もサンプリングされたフレーズのひとつとしても知られています。

しかしその声は、ファブ・5・フレディのものではなく、ロジャー・トリリングという人物の声であると、記事では指摘しています。

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あのサンプリング音、「アアアアアアア…フレッーシュ!」の起源

ヒップホップのトラックやターンテーブルのルーティンで約1800万回以上は登場するであろう、あの奇妙にゆがんだ、長く伸びた音で吐き出す「AAAAHHH……FRESSSHHHH!」というフレーズを1度は聞いたことがあるでしょう。すっかりお馴染みな「フレッシュ」ですが、その起源についてある逸話があります。

デイブ・トンプキンスの素晴らしく特異な著書、ボコーダーに関する歴史書「How to Wreck a Nice Beach」によると、この無限にサンプリングされている「フレッシュ」は、ロジャー・トリリングという男が、単にふざけてボコーダーを使い「ああ、それって本当にフレッシュだ!」(Ah, that stuff is really fresh!)と発したことに由来するといいます。

この「フレッシュ」は、1982年にビル・ラズウェルがプロデュースし、セルロイド・レコードからリリースされたシングル、ビーサイド/ファブ・5・フレディによる「チェンジ・ザ・ビート」の最後に登場します。以下は、トンプキンスの本からの抜粋で、物語を具体化したものです。

参照:How to Wreck a Nice Beach : Dave Tompkins

(「チェンジ・ザ・ビート」のプロデューサー)ビル・ラズウェルによると、「フレッシュ」の声の主は、その夜、ブルックリンのレッドフックのスタジオに偶然居合わせていた事実上のマネージャー、ロジャー・トリリングの声だと言います。「こんなこと言っても、誰も信じないだろうね」とラズウェルは言います。「(ファブ・5・)フレディも知らないだろう」。

(レコーディングの)その日早くに、トリリングはラズウェルの数曲を、当時エレクトラ・レコードの社長だったブルース・ランドバルに視聴させていました。

「(社長の)ブルースはカントリー・クラブみたいな人だった」とトリリングは言います。「いかにもミネソタ州から来たというキャラクターで、机の上に足を置いて両手を頭の後ろに回して、曲が気に入ると『この曲は、実にフレッシュだ』(This stuff is really fresh)と言うんだ」。

その夜遅くスタジオで、いろいろ混乱状態になって家に帰りたかったトリリングは、(とっさに)ボコーダーを通して社長の言葉を引用したと言います。「(社長の)ブルースは当時、『フレッシュ』という単語がヒップホップで使われている『通貨』だとは知らないで使っていた。俺たちもそんな風に考えていなかったと思う」。

最もクローン化されたヒップホップ・ノイズのひとつは、それ自体が模倣そのものであり、変装によって別人と間違われる、このA面*に登場するイミテイターは、機械によって複製されたものだったのです。

* ここでの「A面」とは「BESIDE」のボーカルバージョンのこと。

トリリングは言います。「すべての時間と空間の支配者であると言いたいところだが、『フレッシュ』はレコード会社の(最も白人的な)社長を真似たに過ぎないんだ。深夜に、埋めなきゃならない『余白』を埋めただけのものなんだ。スタジオから早く脱出したかったからね」

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