
via. The Village Voice
ラップの醍醐味は、言葉遊びにあります。
ライムとリズムのアクロバットな技、ディスったりイケてる言葉をビートに載せます。
今までは、ストリートにおけるラップの主流を「価値のないことを大声で言っている」と、批判するのは非常に簡単なことでした。
しかし、もう大丈夫。グランドマスター・フラッシュ & ザ・フューリアス・ファイブの「ザ・メッセージ」は、冗談や自慢話を捨て、本気で取り組んだ12インチです。
ニューヨーク発のカルチャー誌、ヴィレッジ・ヴォイスの1982年7月20日号より。
グランドマスター・フラッシュ & ザ・フューリアス・ファイブの「ザ・メッセージ」に関するレビューで、記事の19日前、同年7月1日にリリースしたばかりの「ザ・メッセージ」をメディアで評論した、最も初期の記事のひとつです。
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「ザ・メッセージ」は、この年同誌のシングルランキング「Pazz & Jop」にて、マーヴィン・ゲイの「セクシャル・ヒーリング」をおさえ堂々のトップ1シングルに輝いています。
絶望と怒りに満ちた言葉が、ゆっくりとしたチャント(歌唱)によって何度も反復していきます。
「押すなよ(追い詰めないでくれ)/ぎりぎりのところにいるんだから/正気を失わないようにしているのさ」
「ザ・メッセージ」はフューリアス・ファイブの2人の声が交互に登場。都会の悪夢のようなイメージを呼び起こします。
「リビングには鼠がいるし/奥にはゴキブリもいる/裏通りにはジャンキーが/バットを持ってうろうろしている」
ラップの特徴である印象主義的な奔放さで、ひとつの言葉のフレームから次の言葉のフレームへとジャンプカット。高揚感と、映画のような広がりを演出しています。
長いエピソードが曲の焦点に。特にクライマックスの「生き急ぎ、若くして死んだ」少年の一代記は、怒りに満ちた朗読劇です。
これは、フューリアス・ファイブが(1979年に)リリースした能天気なシングル「スーパーラッピン」に初めて登場した一節で、「ザ・メッセージ」ではさらに辛辣に、より激しく再構成されています。

Grandmaster Flash & The Furious Five – The Message (1982)
via. Discogs
レコードの音楽設定、緊張感のあるミニマルなシンセサイザーと、韻文によって書かれたラップの組み合わせは、ゾッとすると同時に素晴らしい。
このメッセージを伝えるには、まさにぴったりです。(ちょっと怖いのは、歌詞に「fag」という言葉が2回登場しています)
* fag ホモセクシャルな男性への軽蔑的な表現。
そして曲の最後は、騒がしい街の風景と、警察との突然の衝突で幕を閉じます。
スティーヴィー・ワンダーの「リビング・フォー・ザ・シティ」よりもさらに鮮明で痛々しい。
フューリアス・ファイブだと名乗っているのに、「ギャングか?」と警官の一人が大声で叫びます。警官は武装していて、非常に危険です。

The Village Voice (July 20, 1982)
via. CUL/The Village Voice