「ラッパーズ・ディライト」音楽業界に旋風を巻き起こす

Billboard (1979/10/13)

via. Billboard

「ラッパーズ・ディライト」をリリースしたシュガーヒル・ギャングは、音楽業界に旋風を巻き起こしています。

音楽プロダクション「シルビア Inc.」のレーベル、「シュガーヒル」からリリースされた12インチ・シングルはゴールド認定されたことが明らかに。

レーベルの代表、シルビア・ロビンソン氏が審査を通過したと発表しました。

米ビルボード誌1979年10月13日号の記事より。

Billboard (1979/10/13)

via. Billboard (1979/10/13)

シュガーヒル・ギャングのデビュー曲「ラッパーズ・ディライト」の発売日(同年9月16日)から約1カ月後のニュースで、セントルイスのラジオ局「WESL-AM」での初めてオンエアされた直後から「異例の反響」があった、という話題です。

オンエア直後ラジオ局に電話が、一晩中鳴り止まず

Sugarhill Gang / Rapper’s Delight (1979)

Sugarhill Gang / Rapper’s Delight (1979)
via. Discogs

全国各地からの報告によると「ラッパーズ・ディライト」は、とてつもない盛り上がりを見せています。

このレコードはそのタイトル通りの内容で、15分間のラップ・セッションを展開、披露しています。

タイトル名の「Delight」とは「大いに楽しませる」という意味。

「夜が明けるまでビートは止まらないぜ」
「さあみんなで、ホテル、モーテル、ワチャゴナドゥ」

などパーリー全開のラップが、3人のラッパーにより延々15分繰り広げられます。

ロビンソン氏によると、レコードを初めてオンエアしたラジオ局は、セントルイスの「WESL-AM」とニューヨークの「WBLS-FM」。

「ある日の午後、WESL-AMのジム・ゲイツ氏がラジオで『ラッパーズ・ディライト』をオンエアすると、ラジオ局に電話が殺到、一晩中鳴り止みませんでした」と彼女は語ります「人々はレコードを求めて電話してきたのです」

ラジオ局側も、彼女の主張を立証しています「放送後すぐに『どこでレコードが買えるのか』みんなが知りたがっていました」

Jim Gates

Jim Gates
via. Charles Hawkins

一方、ニューヨークの情報筋によると「WBLS-FM」のフランキー・クロッカー氏は「このレコードはかけないだろう」と語っていたとのこと、「WBLSでオンエアするには『黒すぎる』」と。

しかし結果、2日後の月曜日にオンエアしています。

Frankie Crocker WBLS-FM

Frankie Crocker
via. WBLS-FM

ニューヨーク「WKTU-FM」の音楽ディレクター、マイケル・エリス氏によると「『ラッパーズ・ディライト』はニューヨークで最も売れている12インチシングルだ。毎日100~150件の電話がかかってくるけど、これって他のレコードの10倍だ。局でリクエストされたレコードのナンバーワンだよ」

ロサンゼルス「VIPレコード」のオーナー、クレタス・アンダーソン氏は、「このレコードには『何か』があるんだ」と自慢します。

「金曜日の午後4時に500枚を受け取って、日曜日の夕方までには完売した。こんなこと今まであっただろうか?『ラッパーズ・ディライト』は口コミでヒットしているのさ」

The VIP Records (1972)

The VIP Records (1972)
via. Kelvin Anderson

ロサンゼルス「KKTT-AM」で電話の受付として働く、デニス・スミスさんの証言によると「レコードをオンエアし始めた最初の頃は、気が狂いそうになるほど電話がかかってきました。

バンクーバーのDJが毎日のように電話をかけてきて、どこで手に入れることができるのか、と聞かれたこともありました。この界隈で、これほどの反響があったレコードはない、と皆が言っています」

「ラッパーズ・ディライト」は水曜日の時点で24日間のリリースが行われました。

メンバーは3人のティーンエイジャー(?)

Sugarhill Gang ‎/ Rapper's Delight (France 1979)

Sugarhill Gang ‎/ Rapper’s Delight (France 1979)
via. Vogue

シルヴィア・ロビンソンと共にソング・ライティングに参加したのは、3人のパフォーマー、「マスター・ジー」と「ビッグ・ハンク」「ワンダー・マイク」、全員ロサンゼルスのティーンエイジャーです。

不思議なことに、ビルボードの記事には「全員ロサンゼルスのティーンエイジャー」(all L.A. teenagers)と書かれています。(イメージ作りのための「キャラ設定」か?)しかし実際にティーンエイジャーはマスター・ジーのみ(17歳)。当時ビッグ・ハンクは23歳、ワンダー・マイクは22歳でした。

さらに3人共に「L.A出身」ではなく、マスター・ジーとワンダー・マイクはニュージャージー出身。ビッグ・ハンクはブロンクス生まれで、働くピザ屋がニュージャージーでした。

「『ラップのレコードを作る』というアイディアが浮かんだんです」シルビア・ロビンソン氏は語ります。

「メンバー候補がいましたが、最終的に彼は辞退しました」

「私の息子ジョーイが『仲間を何人か知っている』と言って、ビッグ・ハンクが働いているピザ屋に私を連れて行ってくれました」

辞退したメンバー候補とは「ラヴバグ・スタースキー」のこと。

Sylvia Robinson (1983)

Sylvia Robinson (1983)
via. Michael Ochs / Getty Images)

「彼はハンクを車に乗せ『ここで、ママにラップを見せてよ』と言いました。

すると、通りを歩いていたワンダー・マイクを見かけたので、ジョーイは彼を呼び止め車に乗せ『ママの前でラップをしてみてよ』と言いました。

そしてマスター・ジー、彼はジョーイと一緒に学校に通っている子です」

「『仲間』になった3人は自分たちでラップを書き、私はいくつかのリリックを手伝いました」

初回リリースは12インチシングルのみ、価格は3ドル98セント

Sugarhill Gang / Rapper's Delight (Red label, 1st pressing 1979)

Sugarhill Gang / Rapper’s Delight (Red label, 1st pressing 1979)
via. Discogs

「ラッパーズ・ディライト」は12インチシングルのみのリリースで、価格は3ドル98セント。

「7インチ」シングル・バージョンは、これからラジオやジュークボックスで聞けるようになる、とのこと。

販売元であるルーレット・レコードの制作担当グロリア・メイソン氏によると、「『ラッパーズ・ディライト』の販売枚数は確認していないが、ほぼバックオーダーは埋まっている」と語っています。

Sugarhill Gang / Rapper’s Delight (Radio Promo & Jukebox 1979)

Sugarhill Gang / Rapper’s Delight (Radio Promo & Jukebox 1979)
via. Discogs

「現在は『LP』をカッティング中です」とロビンソン氏は語ります。

アルバムリリースについて彼女は、「シュガーヒル・ギャングがラップだけにとどまらない可能性を、証明することになるでしょう」と強調しています。

Billboard (1979/10/13)

via. Billboard (1979/10/13)

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