「エリックB・イズ・プレジデント」ヒップホップがアートになった瞬間:クエストラブが語るヒップホップ・クラシックの背景

Eric B. Featuring Rakim ‎– Eric B. Is President / My Melody (1986)

Eric B. Featuring Rakim ‎– Eric B. Is President / My Melody (1986)
via. Discogs

Questlove Picks Rap Favorites- Top 50 Hip-Hop Songs of All Time – Rolling Stone

もしもヒップホップの歴史において、ヒップホップがポストモダンの時代に突入した瞬間を決めるとしたら、この曲を選ばなければならないだろう。

ラキムの歌い方は飾り気がなく厳格。ミンストレルではなくポーカーフェイス。

ヒップホップの中で、最も受け入れられるのが難しかった曲のひとつだ。

ルーツのフロントマン、クエストラブが語る名曲「エリックB・イズ・プレジデント」。米音楽メディア「Rolling Stone」の特集記事より。

ニューヨーク州ロングアイランド出身のヒップホップ・デュオ、エリックB&ラキムのデビューシングルを、ジョン・コルトレーンやモーゼを例に「ヒップホップがアートになった瞬間」「聖典」と評しています。

関連記事:ヒップホップ 不朽の名作 14曲 [1979年 – 1986年編]:クエストラブが選ぶ

[11] Eric B. and Rakim, "Eric B Is President" / "My Melody" (1986)

[11] Eric B. and Rakim, “Eric B Is President” / “My Melody” (1986)
via. Rolling Stone

もしもヒップホップの歴史において、ヒップホップがポストモダンの時代に突入した瞬間を決めるとしたら、この曲を選ばなければならないだろう。

ラキムの歌い方は飾り気がなく厳格。ミンストレルではなくポーカーフェイス。

ヒップホップの中で、最も受け入れられるのが難しかった曲のひとつだ。

* ミンストレル:ステレオタイプな黒人の表現

ちょっと考えてみてほしい。俺たちが好きなヒップホップのキャラクターは華やかで、イカれていて、抑揚に富み、ユーモアに溢れてる。

ラキムはそのどれでもなかった。

「俺が怠け者だと言うのか?
頭がおかしいんじゃないのか
俺をドーナツだと思って、お前はグレーズしようとした」

最もユーモアのあるパンチラインは、スティーブン・ライトが注目するほど辛口。

* スティーブン・ライト:1980年代に活躍したスタンダップ・コメディアン

ここで忘れてならないのは「エリックB・イズ・プレジデント」が、当時予想外の話題曲となったジャネット・ジャクソンの「What have you done for me lately」へのアンサーでもあることだ。

Janet Jackson – What Have You Done For Me Lately (1986)

Janet Jackson – What Have You Done For Me Lately (1986)
via. Discogs

ラキムは言うなれば、ジョン・コルトレーンがMCになったような存在だった。

Run-DMCやビースティ・ボーイズは、山の頂上から「ヒップホップが持つパワー」を叫んでいたが、ラキムの場合は正反対に、山の方から彼に寄っていったのだ。

これが偶然ではないということを証明するかのように、B面の「My Melody」でのラキムの一言一句は、まるで聖典のようだ。リアルなMCのための十戒と言っても過言ではない。

この新たなルネサンス期に、ラキムが近くにいると逃げ出さないMCはいなかった。

例えるなら昔の西部劇で、真っ黒な服を着たカウボーイが酒場にやってくると、酒場は静まり返り、ピアノ奏者までもが音楽を止めてしまうというやつだ。

ラキムはMCを本格的なアートに変えた。

これは冗談ではなく真実だ。

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