「プラネット・ロック」の思い出、アーバン・ラジオとクラフトワーク:クエストラブが語るヒップホップ・クラシックの背景

Afrika Bambaataa & The Soul Sonic Force ‎– Planet Rock (1982)

Afrika Bambaataa & The Soul Sonic Force ‎– Planet Rock (1982)
via. Discogs

ローラースケート・パーティーに出席してすべてが変わった。ショーンの兄ちゃんがDJをやっていた。

そこで初めて、今まで一度も聞いたことがなかったドラムマシン「808」の音を聞いた。これから11歳になろうとする少年の、すべてを圧倒した。

俺はブースに駆け込み「曲の題名を教えて」と頼んだ。

Questlove Picks Rap Favorites- Top 50 Hip-Hop Songs of All Time – Rolling Stone

米音楽メディア「Rolling Stone」の特集記事より。ルーツのフロントマン、クエストラブ氏が、自身の音楽活動に影響を受けたヒップホップの重要曲として、アフリカ・バンバータ&ソウルソニック・フォースの「プラネット・ロック」を14位にランクインしています。

関連記事:ヒップホップ 不朽の名作 14曲 [1979年 – 1986年編]:クエストラブが選ぶ

解説文では、当時11歳になる前のクエストラブ少年が、ラジオを通して最先端の音楽に触れていた日常を回想。

ブラックミュージック専門のアーバン・ラジオで、クラフトワークの「トランス・ヨーロッパ・エクスプレス」が普通に流れていた思い出が、後に友人のパーティーで初めて聞くことになる「プラネット・ロック」への伏線になっています。

Afrika Bambaataa and the Soul Sonic Force Planet Rock (1982) Rolling Stone

[14] Afrika Bambaataa and the Soul Sonic Force “Planet Rock” (1982)
via. Rolling Stone

アフリカ・バンバータ&ソウルソニック・フォース「プラネット・ロック」(1982年)

子供の頃、夜寝る前の時間、時計ラジオで「アーバン系」の番組を聴くのは許されていなかったが、強制というほどではなかった。

TVでは当時(1977年から80年まで)「ソウル・トレイン」が、サタデー・ナイト・ライブが終わった直後、午前1時からの放送だった。

なぜ両親が、あることには厳しく、その他のことには甘いのか、俺には理解できなかったが、毎週土曜日の深夜0時45分に、アラームをセットすることは許されていた。

サタデー・ナイト・ライブの音楽ゲストが、ちょうど2曲目の演奏を始める頃にアラームが鳴ると、その後の「お目当の番組」は見てもよかった。

翌朝は日曜学校なので、午前2時にはベッドに戻っていた。

* 「アーバン」:Urban contemporary(アーバン・コンテンポラリー)の略。新たなブラックミュージックのフォーマットとして、1974年に伝説のラジオDJ、フランキー・クロッカーによって提唱された造語。

土曜深夜のアーバン・ラジオは今のように、クラブからのライブ・リモートという発想はなかった。

通常は午後8時から深夜2時まで、お決まりのディスコが流れていて、その後、朝6時までの時間帯は、マンドリルのアルバム収録曲や、10分以上あるビル・ウィザースの「シティ・オブ・ジ・エンジェル」みたいな、主流から外れた革新的な曲が流れていた。

信じられないだろうが、当時のラジオは流行の最先端であり、次代の中心だった。

つまり、ラジオは俺をオタクにした張本人だ。

Mandrill – Mandrill (1971)

Mandrill – Mandrill (1971)
via. Discogs

Bill Withers - Naked & Warm (1976)

Bill Withers – Naked & Warm (1976)
via. 45worlds

1969年から1989年まで、ブラック・ミュージック界ではヒップなものが流行していた。

ドイツの漸進的なチーム、クラフトワークの「トランス・ヨーロッパ・エクスプレス」も大抵この時間帯、いつも土曜日の遅い時間に流れていた。そして、それは催眠術のようだった。

曲名も知らないし、曲名を教えてくれる「シャザム」みたいなアプリなんか当時はなかったから、翌週の土曜日まで1週間の我慢だ。

あの近未来的で、エレクトロニックなシャッフル・ドラムとロボットシンセがラジオから流れたら、いつでも録音できるようにテープレコーダーを準備していた。

Kraftwerk – Trans Europa Express (1977)

Kraftwerk – Trans Europa Express (1977)
via. Discogs

1979年に入ると、ラジオでクラフトワークを聞くこともなくなった。けれども、この曲はいつも頭から離れなかった。まるで映画館のポップコーンのような、小さな粒を頭の中から追い出すことができなかった。

近所の友達、ショーン・ライリーのために開催されたローラースケート・パーティーに出席してすべてが変わった。ショーンの兄ちゃんがDJをやっていた。

そこで初めて、今まで一度も聞いたことがなかったドラムマシン「808」の音を聞いた。これから11歳になろうとする少年の、すべてを圧倒した。

(その後何年か経って、久しぶりにクラフトワークの曲を聴いて、すべての謎は解けたのだが)

俺はブースに駆け込み「曲の題名を教えて」と頼んだ。

「この曲が好きだって? 超早いじゃん!」と言って、12インチシングルをくれたんだ。

それは、まさにコーラのCMの「ミーン・ジョー・グリーンと子供」のやつだった。

Coca-Cola 'Mean Joe Greene'

Coca-Cola CM ‘Mean Joe Greene’
via CBS/YouTube

ショーンの兄ちゃんにもらった「プラネット・ロック」の12インチレコードは、今も持っている。

DJの時にはかけるし、大切にしている。

Afrika Bambaataa & the Soul Sonic Force Music By Planet Patrol – Planet Rock (1982)

Afrika Bambaataa & the Soul Sonic Force Music By Planet Patrol – Planet Rock (1982)
via. Discogs

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