パンク・ロック・ラップ – コールド・クラッシュ・ブラザーズ

Punk Rock Rap - The Cold Crush Brothers (1983)

Punk Rock Rap – The Cold Crush Brothers (1983)
via. Discogs

「パンク・ロック・ラップ」はコールド・クラッシュ・ブラザーズのセカンドシングル。オリジナル盤は1983年タフ・シティ・レコードから12インチ・シングルとしてリリース。配給会社はCBSレコードです。

ヒップホップ系メディア「HHGA」によると

これは独立系ヒップホップレーベルと大手レコード会社が手を組んだ初めての作品でした。

「パンク・ロック・ラップ」はヒップホップとロックを融合させた初のレコードであり、さらに(1985年にリリースされた)ダグ・E.フレッシュ&ザ・ゲット・フレッシュ・クルーのシングル「ザ・ショウ」に登場する「Oh My God!」は、「パンク・ロック・ラップ」をサンプリングしたものです。

軽やかなドラムマシーンにチープなシンセ、「パンク・ロック・ミックス」と「インスト」では歪んだギターを、「パーティ・ミックス」では深いフィルターをかけたラップをフィーチャーしたニューウェイブ色の強いサウンドは、歌詞に登場するナイトクラブ(「ロキシー」「リッツ」「ボンズ」「ローズランド」)界隈の客層を意識しています。

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Punk Rock Rap [Side B] – The Cold Crush Brothers (1983)

Punk Rock Rap [Side B] – The Cold Crush Brothers (1983)
via. Discogs

また、伝説のバトルで繰り広げられた高速ラップの掛け合いも本作では封印し、新しいサウンドを模索しています。

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ヒップホップ、パンク、ニューウェイブ・コミュニティの交流から生まれたヒップホップの古典

Grandmaster Caz and Easy AD of The Cold Crush (1981)

Grandmaster Caz and Easy AD of The Cold Crush (1981)
via. Joe Conzo

トラブルを忘れてくつろごう
ロックするには少し時間がかかるのさ
取り残されないように、髪を下ろそう
コールド・クラッシュでパンク・ロック・ラップをやろうぜ
難しいことはない、楽しくて簡単なことだ

軽くパーティーな歌詞とチープでビザール(風変わり)な曲調から過小評価されることのある「パンク・ロック・ラップ」ですが、ヒップホップ・メディア「Ego Trip」は、1983年の年間ベストシングルとして32位にランクイン。

さらに、スミソニアン博物館監修のヒップホップコンピ「スミソニアン・アンソロジー・オヴ・ヒップホップ・アンド・ラップ」では1982年から84年にリリースされたヒップホップを代表する曲、全12曲の中にランクイン。「ザ・メッセージ」から「イッツ・ライク・ザット」の間に位置する「時代を象徴する」1曲として選出しています。

コールド・クラッシュ・ブラザーズ – パンク・ロック・ラップ

アーティスト:コールド・クラッシュ・ブラザーズ
ライター:カーティス・フィッシャー、カルロス・マンデス、エイドリアン・ハリス
プロデューサー:アーロン・フックス

オリジナル盤は1983年タフ・シティ・レコードから12インチ・シングルとしてリリース。

Smithsonian Anthology of Hip-Hop & Rap / Various – Box Set」のレビューより。

1983年秋に発表された「パンク・ロック・ラップ」は、ブロンクスを拠点とするパイオニア、コールド・クラッシュの2枚目のシングルとしてリリースされたものです。このシングルはライブのエネルギーを取り込もうとする試みに加え、先見性がありリスクをいとわないグループという評判を強調するものでもありました。

グランドマスター・キャズによれば、「パンク・ロック・ラップ」のリリースは、メジャー・レコード会社がインディペンデント系ヒップホップ・レーベルと契約を結んだ史上初のケースとなりました。

関連記事:Grandmaster Caz(グランドマスター・キャズ)

曲の冒頭で(当時キャズのガールフレンドだった)女性が「オー・マイ・ゴッド、コールド・クラッシュよ」と登場。この「偽の」英国訛りの女性の台詞によってCBSの幹部も含めて多くの人が、このグループは白人だと信じてしまったと言います。キャズによると、自分たちが黒人だと気づいた幹部たちは、どうやってグループを売り込めばいいかわからなくなってしまった、と語っています。

コールド・クラッシュがこの曲で表現しようとした最も重要なことは、1970年代後半から1980年代初頭にかけてヒップホップ、パンク、ニューウェイブのコミュニティ間にあった交流関係とコラボレーションです。おそらくこれはヒップホップ界における知られざる物語のひとつでしょう。

Cold Crush Brothers at Club Negril (1981)

Cold Crush Brothers at Club Negril (1981)
via. Joe Conzo

Cold Crush Brothers at Club Negril (1981)

Cold Crush Brothers at Club Negril (1981)
via. Joe Conzo

よく知られる例として、1985年にリリースされた「ウォーク・ディス・ウェイ」があります。この曲はランDMCとロック・グループ、エアロスミスとのコラボレーションによるもので、ヒップホップとロックにおける、黒人と白人の最初の出会いとして多くの人に賞賛されています。

しかし音楽業界のメインストリームではそうであっても、その草創期にヒップホップに深く関わった多くの人々は、この組み合わせは重要ではあるが、あまりにも「作られていて」不自然だと考えています。

ヒップホップ、パンク、ニューウェーブそれぞれの世界の融合は、互いへの賞賛と尊敬に基づいた、より「オーガニック」なものでした。

多くの歴史家によると、これらのコミュニティに最初に集まったのはビジュアル・アーティストだったと指摘しています。ファブ・5・フレディーやジャン・ミシェル・バスキア、キース・ヘリング、アンディ・ウォーホルといったアーティストたちは同じ空間に身を置き、同じシーンに頻繁に出入りするようになっていました。

そして彼らの作品がダウンタウンのギャラリーに展示され始めると、それがきっかけで街の片隅にあった音楽シーンが、もう片方の街に紹介することになったのです。

Jean Michel Basquiat, Andy Warhol, Fab Five Freddy (1984)

Jean Michel Basquiat, Andy Warhol, Fab Five Freddy (1984)
via. Patrick McMullan/Getty Images

Fab 5 Freddy and Debbie Harry at the Mudd Club (1980)

Fab 5 Freddy and Debbie Harry at the Mudd Club (1980)
via. Bobby Grossman

1980年代初頭、ニュー・ウェイヴ、パンクシーンの中には(わずかですが)ヒップホップを取り入れた楽曲をリリースしたミュージシャン達がいました。

代表的な例で言うと、ブロンディの「ラプチュアー」(1980年)、トム・トム・クラブの「ワーディ・ラッピングフッド」(1981)、セックス・ピストルズの元マネージャー、マルコム・マクラーレン率いるザ・ワールド・フェイマス・サプリーム・チームの「バッファロー・ギャルズ」(1982年)などです。

コールド・クラッシュ・ブラザーズの「パンク・ロック・ラップ」は、優れたリリックを披露しながら、そのアップテンポなリズムによって、ジャンルを問わず楽しい気分にさせてくれます。

それは、アップタウン出身の黒人やプエルトリコ人のキッズたちが、現実に直面しながらも芸術家を気取るダウンタウンのキッズたちと交流し、踊り、音楽を奏でていた過ぎ去った時代を象徴しているのです。

The Cold Crush Brothers (1981)

The Cold Crush Brothers (1981)
via. Charlie Ahearn

クレジット

Writers:

  • A. Harris (Easy A.D.)
  • J. Wilson (JDL)
  • C. Mandez (Charlie Chase)
  • C. Fischer (Grandmaster Caz)
  • K. Pounder (Almighty KG)

Producer:
Aaron Fuchs for From Scratch Productions

All Mix by Charlie Chase, except, Punk Rock Mix by Aaron Aaron Fuchs

Remix Engineer:
Mitch Yuspeh

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