
Grandmaster Flash at Yo! MTV Raps (1994)
via. Rob Swift
まずやらなければならなかったのは、ミキサーの外側にキュー・システムを構築することだった。そこで俺はラジオシャックに行っていわゆる単極双投スイッチというものを買ってきた。
グランドマスター・フラッシュが愛用したDJシステム「ピーカブー」。1994年ヒップホップ系音楽番組「Yo! MTV Raps」に出演したフラッシュは、そのシステムの中でも特にミキサーの改造について、さらに「クイックミックス」のための下準備、レコードのブレイク部分を瞬時に取り出すための「クロック理論」について解説しています。
関連記事:Grandmaster Flash(グランドマスター・フラッシュ)
番組ホストは、Doctor. Dre(ドクター・ドレ:元N.W.Aのラッパー「Dr. Dre」とは別人)とEd Lover(エド・ラヴァー)です。
ミキサーのキュー・システムを自作改造

Grandmaster Flash at Yo! MTV Raps (1994)
via. Rob Swift
実は、最初に所有していたミキサーはソニー製のもので、ソニーのMX-8。8チャンネルのマイクミキサーだった。
*正確には「ソニーのMX-8」の入力は6チャンネル。

Sony MX-8 6 Channel Mixer
via.reverb

Sony MX-8 6 Channel Mixer
via.reverb
まずやらなければならなかったのは、ミキサーの外側にキュー・システムを構築することだった。そこで俺はラジオシャックに行っていわゆる単極双投スイッチというものを買ってきた。中央の位置ではオフになるやつだ。

単極双投スイッチ(SPDT on-off-on)
via.ebay

家電販売店「ラジオシャック」
via.ebay
これで左にスイッチを入れると左のターンテーブルの音がモニタリングでき、右に入れるともう一つのターンテーブルの音がモニタリングできるようになる。これをミキサーの上部にクレイジーグルーで接着した。

多目的強力瞬間接着剤「クレイジーグルー」
via. walmart
さらにスイッチとスイッチの間に5〜6ワット程度の外部アンプを配線した。ヘッドホンを駆動するのに十分なワット数だ。これで自分がやっていることを事前に聞くことができるようになった。当時のミキサーにはクロスフェーダーがなかった*ので、実際に上下に動かしてミックスしていた。それで、マイクミキサーを持ってきて改造したのさ。
*正確には1977年発売開始のミキサー「GLI PMX 7000」にすでに水平方向のクロスフェーダーが搭載されていました。
レコード盤を時計に見立て印をつける「クロック理論」

Grandmaster Flash, Ed Lover & Doctor Dre at Yo! MTV Raps (1994)
via. Rob Swift
そのために、俺は「クロック理論」というものを作ることになった。クロック理論とは、レコードの特定部分に印をつけるというものだ。たとえばレコードの名前を…(ここでホストのエド・ラヴァーが「グルーヴ・トゥ・ゲットダウンがいい!」と提案)
じゃあ、たとえばTKレコードの「グルーヴ・トゥ・ゲットダウン」としよう。

Groove To Get Down – T-Connection (1977)
via. Discogs
で、どうするかというと、もちろんレコード・レーベルの名前は中央の上部にあるわけだ。だから、たとえばレーベル名が「TK」で「T」が左側の場合、(それを目印に)ちょうどブレイクが始まる所に印をつける。両サイドに印をつける。だから…

「印をつける」を身振りで説明するフラッシュ
via. Rob Swift

司会のドレ氏は印のついたレコードを取り出し「こんな感じだろ?」
via. Rob Swift
その通り、これをクロック理論と呼んでいる。9時、12時、12時15分…6時、みたいな感じだ。これは俺が考えた理論で、ある特定のブレイクを実際に「事前に知る」ことができるんだ。
10秒とか15秒とか。幸いなことに1分程度のブレイクもあるが、その場合レコードを巻き戻す方法を考えなければならなかった。物理的に自分の体を回転させ反対側に行って、特定の回数だけ巻き戻して確認する。これをすべて一度に行わなければならなかった…
ここで(番組の時間切れのようで)ドレ氏はフラッシュの話を遮りインタビューは終了。
ドクター・ドレ:フラッシュ、いやいや、俺には専門的すぎて無理だ。
エド・ラヴァー:次のビデオに行こう。