
“Rapper of the month, Eric B.”
via. Spin
今月のラッパー、エリックB
厳密にはアンダーグラウンドですが、「エリックB・イズ・プレジデント」は今月のベスト・ラップ・レコード。
ヒップホップ・デュオ「エリック・B & ラキム」のDJでありプロデューサー、エリック・Bを「ラッパー」と紹介するのは米音楽誌「Spin」1986年10月号。
同誌のコラムでは、当時リリースされたばかりの無名の新人とそのデビューシングル「エリックB・イズ・プレジデント」を、今月のベストと評しています。

Eric B. Featuring Rakim – Eric B. Is President / My Melody (1986)
via. Discogs
エリック・B・フィーチャリング・ラキム 「エリックB・イズ・プレジデント」「マイ・メロディ」(ザリア)
「エリックB・イズ・プレジデント」におけるピークは、希望に満ちた恋人に向かって「俺をドーナツだと思って、お前は俺をグレーズしようとした」と言い放った瞬間です。
* You thought I was a doughnut/You tried to glaze me.
この言葉が、何を意味するのかわからないけれど、確かに響きはいい。
とは言っても、この12インチシングルが単に「名言集のショーケース」ということではありません。
それはまさに、オールドスクールなファンク/ラップと、最新の電子音ハードコア・ヒップホップが、レコード上で激しくぶつかり合うスタイル・ウォーズ。
トラックにはシンプルなビッグビートを用い、ベースラインが滑り込む。そのグルーヴに悪戯を仕掛けています。
ベースの音が鳴ったかと思うと、単調で規則的でないラップが、グルーヴの鼓動を混乱させているのです。
さらに安定かつ予測不可能なスクラッチの詰め合わせ、音響効果とチープな音声処理を追加。(このレコードでは、どのようにスクラッチするかではなく、何をスクラッチするかが重要です)
まるで3、4枚のレコードで、すべての生命体を支配しようと戦っているかのよう。流れを維持するよりも、エフェクトでジャムすることに興味がある人がミックスした、ダブチューンにも似ています。
「エリック・B」が(予定外の)トラブルなしに成功できないとしたら、逆にヤバいくらいだ。
厳密にはアンダーグラウンドですが、今月のベスト・ラップ・レコードです。

Eric B. featuring Rakim: “Eric B. Is President” b/w “My Melody” (Zaria) (October 1986 Spin Magazine)
via. Spin
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