
The Scratch Story (1981)
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The Scratch Story with Jessica Jason : YouTube
DJジャジー・ジェイとウィズ・キットの貴重なインタビュー映像です。(撮影時期、概要欄には「1981年編集」と書かれています)
「トミーボーイ・レコード制作」とクレジットのある、DJハウツービデオで、出演者はソウルソニック・フォースのDJジャジー・ジェイ。そしてファンキー・フォー・プラス・ワンのDJとしてウィズ・キットが登場しています。
関連記事:Whiz Kid(ウィズ・キッド)
司会の女性は、このビデオを制作した映像ユニット「ビデオ・ミックス・プロダクション」のディレクター、ジェシカ・ジェイソン。そしてユニットの相方で、当時夫でもあったダニー・コルニエッツがビデオのプロデューサーとしてクレジットされています。

ダニー・コルニエッツ & ジェシカ・ジェイソン
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ダニー氏の公式チャンネルに映像作品のアーカイブとしてアップされたもののひとつで、「ダニー&ジェシカ」のユニットは「プラネット・ロック」のMVも手がけています。
「基本的に…」(basically)が口癖のジャジー・ジェイは、インタビューでは丁寧に解説+実演。そして当時DJコンテストの優勝者として黄金時代でもあった、故ウィズ・キット氏の高速カッティングが映像に残された、非常に貴重な資料です。
基本的に、フェルトと、2枚の同じレコードが必要

(左から)ウィズ・キット、ジャジー・ジェイ、ジェシカ・ジェイソン(1981年)
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ジェシカ:
こんにちは、ジェシカ・ジェイソンです。今日は、ファンキー・フォーのウィズ・キットと、ソウルソニック・フォースのジャジー・ジェイに来ていただきました。2人ともスクラッチDJで、「スクラッチ」とはどういうものか、これから実演してもらいましょう。
まず最初にお聞きしたいのは、ターンテーブルのプラッター(円盤部分)は実際に動かしているのかということです。どうやってやっているのですか?

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ジャジー:
まあ、実際にはプラッターを動かしているわけではないんだ。プラッターが回転している状態で、レコードを操作する。そして、そのためには、いくつかの…。

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ジェシカ:
ターンテーブルの上にあるものは何ですか?ジャジー:
ウィズ・キッドがレコードの下に敷いているのはフェルトのようなもので、その下には(薄い)プラスチックの切れ端を置いている。これでターンテーブルを回しやすくしているんだ。

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ジェシカ:
どうやるのか、具体的に見せてもらえますか?

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ジャジー:
こんな感じでレコードを、プラッターが回っている状態で。するとプラッターを完全に止めずにレコードを前後に操作することができるんだ。手を離した瞬間に、レコードの速度が落ちることがない。

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ジェシカ:
プラスチックが真ん中にあるから。ジャジー:
そう、レコードとプラッターの間の摩擦が少なくなるんだ。
ジェシカ:
なるほど。実演してもらってもいいでしょうか?ジャジー:
オーケー。いろいろな方法があると思うけど…。みんな独自のスタイルを開発するように、すべてのDJが自分のスタイルを確立して、自分なりのやり方でやっているんだ。名前を署名するようなもので、誰も同じことをしないのさ。俺だったらこんな感じでっていうのを、ちょっとやってみる。

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* 使用機材について、コメント欄に「ターンテーブルは、テクニクス SL-D1」「DJミキサーはELI」との指摘があります(「ELI 8080」説ですが、「8080」はフェーダーが横スライドではなく回転ノブなので候補から消えます。映画「ワイルド・スタイル」のDST使用ミキサーと同型であるならば「ELI SL-9090X」が有力説です。参照:DJWORX)

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* 使用レコード:ピーセズ・オブ・ア・ドリーム「マウント・エアリー・グルーブ」

Pieces Of A Dream – Mt. Airy Groove (1982)
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ジャジー:
基本的には、レコードの短いパートを取り出して引き延ばすことで、もともと長い曲だったかのように見せかける。そしてラップに悪影響が無いように、安定したビートをキープしなければならない。
ジェシカ:
同じレコードを2枚持っているんですね。ジャジー:
そう。ターンテーブルからターンテーブルへ、ビートを刻み続ける。大事なのは、実際に聞こえるサウンドが、まるで別のレコードをかけているようにすることだ。
ジェシカ:
いつ頃からこれ(この技術)は始まったものなのですか?ウィズ:
1975年頃かな。

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ジャジー:
そう、75年か76年頃から。どのDJも荒削りな段階だった。いろいろ試行錯誤があって、最初は「スクラッチ」も存在しなかった。だんだん複雑になっていって、みんな自分なりのスタイルを確立していった。
ウィズ・キッドによる高速カッティングの実演

(左から)ウィズ・キット、ジェシカ・ジェイソン(1981年)
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ジェシカ:
では、ウィズ・キッドに「スクラッチ」と呼ばれる、様々な種類のテクニックを紹介してもらいましょう。ウィズ:
オーケー、まずはこれが平均的なヒップホップDJのシンプルなカッティング。まあ、こんな感じのプレイだ。

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* 使用ヘッドホンについて、コメント欄に「(家電販売店)ラジオシャックに売っていた古いKOSS(コス)のヘッドホンに似ている」との指摘が。その問いにダニー・コルニエッツ氏本人が「ヘッドホンは70年代のゼンハイザーかKOSSだと思う」と答えています。

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* 使用レコード:ジョン・デイヴィス&ザ・モンスター・オーケストラ「アイ・キャント・ストップ」

John Davis And The Monster Orchestra – I Can’t Stop (1976)
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ジャジー:
ウィズ・キッドがいま何をやってるかというと、基本的にレコードの一部を取り出して、
それを何度の繰り返し(スクラッチの)サウンドを作っている。
ジャジー:
(ちなみに)これは俺たちのお気に入りのレコードのひとつだ。
ジャジー:
ウィズ、少しスピードアップしてみよう。
ジャジー:
ターンテーブルとターンテーブルを素早く行ったり来たり。これは「バックスピン・メソッド」と呼ばれるものだ。
ジャジー:
次にウィズが披露するのは「クイック・スピード・カッティング」の実演だ。レコードの特定のパートを、目で追いつけないほどの超高速で行ったり来たりする。
ジャジー:
基本的にはこういった感じだ。

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ジェシカ:
あなたたちのプレイは、どこで見ることができるんですか?
ジャジー:
まあ、基本的には…ウィズ:
ロキシーだ。

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ジャジー:
そう、ロキシー。最もホットなクラブのひとつで、ラップやクイックカットのDJなんかが皆…。ジェシカ:
「ロキシー」ですね。ジャジー:
ああ、18丁目ウエストサイドのロキシーだ。(出演者は)みんな、基本的にはブロンクスで育ったやつらだ。ブロンクスにはヒップホップのテリトリーがあって、いいDJがたくさんいるんだ。ウィズ:
他にはいない。ジャジー:
そう、他の地区にはない。俺たちはブロンクス出身であることを誇りに思っている。

Whiz Kid, Jazzy Jay and Jessica Jason (1981)
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出演DJ:ジャジー・ジェイ & ウィズ・キット
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クレジット:
Presented by Jessica Jason
D.J.’s: Jazzy Jay & Whiz Kid
Courtesy of Tommy Boy Records
Produced and Directed by
Danny & Jessica
A Video Mix Production
* オープニング曲:フェーズ2「ザ・ロキシー」

Phase 2 – The Roxy (1982)
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* エンディング曲:ビーサイド/ファブ・5・フレディ「チェンジ・ザ・ビート(フィメール・バージョン)」

Beside / Fab 5 Freddy – Change The Beat (1982)
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