「フレッシュ」は偶然の産物だった?:マイケル・バインホーン インタビュー [チェンジ・ザ・ビート]

Michael Beinhorn

Michael Beinhorn
via. @michaelbeinhorn

「This stuff is really fresh !」誕生秘話。

サンプリング・ソースとして最も使用された曲のひとつ、またファブ・5・フレディー氏界隈の80年代の活動を知るための資料としても重要な、ヒップホップの古典「チェンジ・ザ・ビート」。

その「フレッシュ」のフレーズが生まれた経緯を、楽曲にプロデュース兼ミュージシャンとして参加したマイケル・バインホーン氏が2つの音楽メディアで語っています。

Producer Michael Beinhorn: Ultimate Guitar

Interview with Michael Beinhorn : Gearspace.com

「チェンジ・ザ・ビート」でのバインホーン氏は、ビル・ラズウェル氏とのユニット「マテリアル」名義でプロデューサーとして、またOBXAのシンセを演奏するキーボードプレイヤーとして、さらにドラムマシンDMXのプログラマーとしてクレジットされています。

Change the Beat Material & Michael Beinhorn

「チェンジ・ザ・ビート」裏ジャケットのクレジット欄
via. sothebys

インタビュー 1:「フレッシュ」が生まれた経緯について

音楽コミュニティ「Ultimate Guitar」に掲載された、マイケル・バインホーン2015年のインタビューより。聞き手は同メディアのライター、スティーブン・ローゼン氏

Producer Michael Beinhorn: Ultimate Guitar

マイケル・バインホーン氏の作品群について、彼は才能あるキーボード奏者であり、ベーシストのビル・ラズウェル*との長年にわたる音楽的なパートナーでした。

彼は最終的にハービー・ハンコックのアルバム「フューチャー・ショック」に取り組み、ヒップホップをより広い市場に広めるためのキーとなるトラック「ロックイット」を共同執筆することでも知られています。

*ベーシスト、ビル・ラズウェルと(インタビューに答えた)マイケル・バインホーンによるバンド・ユニット「マテリアル」は、プロデューサー兼ミュージシャンとして、1984年にグラミー賞を受賞することになるハービー・ハンコック「ロックイット」を含むアルバム「フューチャー・ショック」(1983年)に参加。

同時期、セルロイド・レコードのプロデューサー兼ハウスバンドとして活動し、レーベルからリリースされたファブ・5・フレディーの「チェンジ・ザ・ビート」(1982年)を制作しています。

– 「フレッシュ」のスクラッチが生まれた経緯について教えてください。

実は(「ロックイット」がグラミー賞を受賞する)2年前に作った曲なのですが、それがヒップホップ・ミュージックで最も使われる音になるとは思ってもみませんでした。(「フレッシュ」は)曲の「余白」を埋めるための手段という感じでした。

ファブ・5・フレディーの「チェンジ・ザ・ビート」という曲のエンディングです。何か入れようと思っていたら誰かが提案したんです。誰かは覚えていませんが、私かビル(・ラズウェル)が誰かに「ああ、これはすごくフレッシュ!」(Ah, this stuff is really fresh)と言ってもらおうと。

Beside / Fab 5 Freddy – Change The Beat (1982)

Change The Beat – Beside / Fab 5 Freddy (1982)
via. Discogs

– それはとても面白いですね。

ボコーダー(人の話し声を再現するような装置)にマイクをつないで、レコーディングでそこに居た人に「ああ、これはすごくフレッシュ」と言ってもらって、OBXAで適当な音を弾いたただけなのです。僕はただ(キーボードに)手を置いただけ。だから、この方法をやったとしても再現不可能なんです。「フレッシュ」については、これが全てです。

– 適当に選んだ音だったんですね。

それが全てです。その後、グランドミキサーDXTが「ロック・イット」で採用したのをきっかけに、みんながスクラッチし始めたのです。

関連記事:「アアアアアアア…フレッーシュ!」の秘密:ビーサイド/ファブ・5・フレディ「チェンジ・ザ・ビート」

インタビュー 2:「フレッシュ」をどのように作ったのか、具体的に

プロ・オーディオ系メディア「Gearspace.com」に掲載された、マイケル・バインホーン2022年8月のインタビューより。同メディア・コミュニティとのQ&Aセッションによるもの。

Interview with Michael Beinhorn : Gearspace.com

– 数え切れないほど何度もスクラッチされた「フレッシュ」のヴォーカル・サンプルをどのように作ったのか、説明していただけますか?非常にクールなサウンドですが、具体的にどうやったのかがわからないのですが。

「フレッシュ」のサンプルは本当に偶然の産物でした。マテリアルはファブ・5・フレディーというアーティストと一緒に「チェンジ・ザ・ビート」という曲を作っていました。

そして曲の最後に、ロジャー・トリリングという男にマイクを持たせ「ああああ、それって本当にフレッシュだ!」と言わせたのです。

もちろん、そのマイクはボコーダー*につながれていて、OB-Xaを弾きました。オシレータのチューニングは適当で、キーボードにできるだけ多くの指(私の両手)を置きました。

大体そんなところです。面白いことに、その「事故」がヒップホップで最も多くサンプリングされた音になったのです。

*「フレッシュ」に使用したボコーダーは、ローランド社製の「SVC-350」であると、同社のメディアに記述があります。

参照:ローランドがヒップホップに与えた影響 [TR-808]

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