
Africa Bambaataa of The Zulu Nation, Bronx River Projects (1982)
via. Sylvia Plachy
競争の激しいヒップホップシーンにおいて、誰もがアフリカ・バンバータを賞賛しているわけではありません。
懐疑的な人たちは「彼は何をしている人なの?」と尋ねます。しかし、それは無理もありません。
ニューヨーク発のカルチャー誌、ヴィレッジ・ヴォイス1984年1月3日号より。アフリカ・バンバータがソウル・ソニック・フォースと共に「プラネット・ロック」をリリースした2年後の記事です。
彼は(どちらもやっているとはいえ)ラッパーでもシンガーでもありません。
いくつかの素晴らしいレコードには、バンバータの名前がクレジットされています。しかしソングライターとしても、プロデューサーやアレンジャーとしても、彼は有名ではありません。
また、バンバータのDJ演奏は、独自の審美眼とその普遍性で他の追随を許さないほどですが、スクラッチやミックスに関しては一流のプレイヤーではありません。
しかし、バムを賞賛しない人でさえ、彼がみんなに好かれていることに異議を唱える人はあまりいません。それは競争の激しいヒップホップシーンにおいては快挙なことです。
礼儀正しく、物腰は柔らか、シャイですらある彼は、誰に対しても公平に接することでも知られています。
彼が率いる「ズールー・ネイション」。その哲学の根底にある「公共性の高さ」は、クラブ「ロキシー」への参加や「プラネット・ロック」の大ヒットによって、さらに増しています。

Afrika Bambaataa & The Soul Sonic Force – Planet Rock (1982)
via. Discogs
「バンバータはボスというよりむしろ大物だ」あるファンはこう評しています。「彼は富を一極集中させるのではなく、富を循環させている」
確かにバンバータは何もしていないかもしれません。
しかし彼のヒーローのひとりである、P・ファンクのジョージ・クリントンも同じ「容疑」がかけられている、と覚えておくといいでしょう。
「作家至上主義」の人達が注意しなければならないこと。それは、ソウル・ソニック・フォース、シャンゴ、タイムゾーンとの活動で生まれたバンバータの作品群についてです。
ともすれば男臭い、マッチョになりがちな表現を避け、涌き上がるエモーション、エネルギーを作品に落としこむことに成功しています。
これは、ラップグループのアーティストとしては、唯一無二の存在と言ってもいいでしょう。

via. CUL / The Village Voice (1984/1/3)